小項目「牧草フィーダー彫刻職人」
※番外編です。ふざけた内容です。
星のヘアライン

ユキ写真「使用前の牧草フィーダー」    
 

 「牧草フィーダー」…。 最近まで、それは金属製が主流であった。しかし、最近では、使用者の歯を慮り、齧り木を兼ね、木製素材も流布している。


 ここに、ひとりの匠(たくみ)がいる。
牧草フィーダー彫刻家として、一部に根強いファンを持つ巨匠、
東雲雪乃助(しののめゆきのすけ)76歳。(うそうそ)
彫刻家として高い技術は絶賛に値するが、頑固で、融通が利かない彼は、(女の子だけど)一般社会で知られるクリエーターではない。

これは、彼と、彼の葛藤を追ったドキュメントである。

 題して、「情熱のびふぉーあふたー」 

 2009年11月18日。しし座流星群極大予報の夜、管理人から匠に、ひとつの牧草フィーダーが渡された。下がり始めた気温のせいか、それは、いつもより固い手ごたえがあった。「これは手こずるかもしれない」誰もがそう思った。匠は、歯ごたえを確かめ、管理人を一目し、小さく頷いた。

「大丈夫だ。まかせておけ」
迷いの無い眼差しがそう語っていた…。

 それから数日間。昼夜を問わず創作活動は続けられた。

 
 イラスト「夜中のうさねこ」  
 
それでは、匠の作品をご覧いただこう。 





 
 写真「細工後の牧草フィーダー」
   
 何と言うことだろう。フィーダー前面の武骨な柵は取り払われ、それまで無かったアーチ型に近い大きな窓が作られている。ネオゴシック様式を学んだことがあるという匠らしい、大胆かつ緻密な作風である。また、側面に施された野趣溢れる彫刻は、まるで、龍が昇っていくかのような壮麗な曲線を描いている。敢えて切り口を荒削りなままにすることにより、モダンでスタイリッシュな仕上げとなった。吹き抜けの内部は、開放的な印象を与え、見る人を魅了する。
もうただの「牧草入れ」の面影はない。(牧草入れても落ちちゃうからね)

 これほどまで繊細かつ大掛かりな細工を施すのは、さぞ大変だったでしょうと問うと、匠は、なあに、時間なんていくらでもありますから、と、朗らかに笑った。

 匠は更に、こんな言葉を続けた。

 私は、芸術家でも、何でもありません。ただ、そこにあるから削る。それだけです。これからだってそうです。何だって削ります。テーブルの足でも、押入れの戸でも、本棚でも。所詮、自分は不器用なんですよ。これしか出来ないわけですからね。

 …大作を作り終えた匠の表情には一切の驕りは無く、謙虚にひたむきに創作活動を続ける職人としての自負だけがあった。そして、息もつかずに次ぎの創作へと取り掛かろうと、座布団の端に歯をたてている。

そのたゆまぬ姿勢に喝采を送りたい。

 2009/10/1脱稿

星のヘアライン

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